Entfremdung

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身体と書きながらわたしは文字をがりがりと噛んでいた。噛んで削りとる感触はあったが味はなかった。涙を流しながらわたしは「わたしは涙を流している」と書いた。涙を流すわたしについて語ることのできる者はもうどこにもいなくなった。美しいといいながらわたしは足の甲に向かって髪飾りを投げつけた。あとから美しいことを思いつけばよいと思っていたのでただ発話してみたまでだ。わたしは他人の幸せを願いながら今日どんな音も耳にすることがなかった。暗い水槽のなかにじっと沈みながらわたしは自分の人生を呪っていることにふと気付く。そしてもはや真夜中にしか呪えないことにも気付いて唖然とするのだった。