2015-01-01から1年間の記事一覧
「わたし(わたしたち)は何かを収奪されている、あるいは収奪されてしまった、だから権利として失われたものを取り返し、関係を是正しなければならない」という態度について、ずっと考えつづけてきた。生きづらさに直面する人たちはこの理路を一度はたどる…
勤務先のフロアの行きどまりにある背の高い細長い窓は暗く一度も降ろされたことのないロールスクリーンがついていてロールスクリーンを降ろすためだけについている長い長い紐は天井から吊るされ通気口からの風でいつも大きく揺れている わたしの影がガラスに…
アイスコーヒーをそそいだグラスのなかに黒い小さい虫がとびこんできてそのままインクの染みのようにくたっと浮いて縁にゆらゆらと流れ着いていくコーヒーのうえにできた溶けた氷の透明な層の静けさをみながらわたしはただグラスをながめていた時間の長さを…
均質な光のもとには影がないのでなにも立ち上がらない白くすみずみまでのっぺりと冴えわたってとても清潔だ青ざめた紙の上でわたしたちは愛し合うそこに謎はないぎりぎり光を強めてじりじり目をこらして明日のための紙のしみをみつけなければことばがうしな…
翌朝のための牛乳や卵が切れていたので、夜の公園を抜けて買い物に出かけた。階段をのぼった先のゆるやかなスロープの脇の闇のなかに、遠くの街灯に照らされたあじさいが暗く浮かんでいた。枯れている部分とそうでない部分がまざったあじさいの丸みに片手で…
わたしの鋭利な空洞であったはずの割れたガラスの側面のようにざらりとした飴玉 ばらばらと打ち込まれた五月の雨のなかに醜くなめらかに溶けているのを舌にのせなかったのはそれがなかったからそのときに砂糖の砂のじゃりじゃりとした音をこめかみに聞く食べ…
雨の夜がつづいた。ざわざわとした雨の気配がそのうちはっきりとした雨粒の音となって屋根を穿つ音をききながら、なぜ穿つ(うがつ)と穿く(はく)は同じ漢字をあてられているのだろうと考えた。雨がこつこつと地道に屋根を打ちつづけてできた穴に薄いスト…
そうじゃないの、ということがどういうことなのかわからなくなってしまったのでそうなの、ということにしていたけれどそれはそうじゃないの、でもあるそんなことはどうでもいい、というときのどうでもいいというのはどちらでもおなじといういみではなくてど…