2014-01-01から1年間の記事一覧
わたしは赤い服をもうながらく着ていない。 わたしは前を向かない。 わたしは雨にぬれていない。 わたしのうしろは森ではない。 わたしはわたしをみる。 わたしは色だった。 わたしは雨に穿たれていた。 わたしのうしろは水だった。 わたしの顔は前を向いて…
身体と書きながらわたしは文字をがりがりと噛んでいた。噛んで削りとる感触はあったが味はなかった。涙を流しながらわたしは「わたしは涙を流している」と書いた。涙を流すわたしについて語ることのできる者はもうどこにもいなくなった。美しいといいながら…
郵便受けはとても無防備だ。ただ開かれていて、宛先のある言葉も宛先のない言葉も無差別に投函される。いまは特定の人へ宛てられた手紙が投函されることはめったになく、宛先だけ違う同じ言葉の書かれたチラシばかりが入るのだろう。待っていないのに結果的…
耳が刻まれるのを避けるために眉間に秒針を堆積させながら別の拍子のことを考える、それはおととい通学路ですれちがった子どもたちの止まっては加速する靴音でありそれはさっきしめそびれた蛇口からしたたる水でありそれはいつともわからぬしかしあの日、地…