Out of focus (scene of suicide)

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たしかに存在することを目の端にとらえながら
けっして焦点を絞ってはならない
ぼやけた色や光や輪郭から
さまざまなイメージがまざりあってとけていくさまが
みたものの鋭い切っ先とはまるでちがって
あまりに甘美で耐えがたいので
いっそかなしみとよんでいたものをXと書きかえて
別のものを代入しようとしてみる

それでもわたしのかなしみはそこにあり
焦点を絞らなかったために広く長く薄くひろがることになった
名付けないことで指し示すことができなくなったその
静かに降りつもるけっしてとけない粉雪のようなその感触を
なんども書きなおして消して別のものをつくりだし
つくりだすことで生命を与えつづける
はっきりとみることのないたしかに存在するもののなかの
波打つ脈によりそって生きる